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省略しデフォルメする力

歩いて、地図をつくることの意義とは

「地図」とは 3次元の「現実」を 2次元で表現し、「リアル」と「ファンタジー」を仲介するメディアである。「地図」によって、私たちは立体感覚と平面感覚との間を行き来し、認識を新たに、豊かにしてゆくことができる。

「現実」はどのように「地図化」されるのか。そのポイントは2つある。

1つは「省略する」ことであり、もう1つは「デフォルメ」することだ。

地図は、目的に沿って、膨大な情報群から不要な情報を捨てることでつくられる。逆の言い方をすれば、必要な情報のみピックアップする。望ましい「省略」がなされないと使える地図にはならない。

選ばれた情報は、地図上に配置しなければならない。国土地理院から発行されている地図のように配置するならば、正確さと精密さを基準として配置することになる。図上のどこも一定の縮尺で、地形のでこぼこや距離、そこに存在する建築物などが幾何学的に正しく書き込まれる。しかし、配置の仕方はそれだけではない。なぜなら、「リアル」に再現するよりも「デフォルメ」することが効果的な場合があるからだ。その好例が、地下鉄やバスの路線図だ。駅・バス停の順序やどこで他の線・系統に乗り換えられるかは正確でないといけないが、現実の距離や方向の正確さ、精密さにこだわる必要はない。むしろ「デフォルメ」して描きいた方が、わかりやすく、使い勝手のよい地図ができあがる。

「地図とは、地表にあるもろもろの地物および諸現象の分布を、それぞれの目的にそった価値観・哲学にしたがって取捨選択し、適切なデフォルメによって、目的に最もかなうようにデザインした上で主として二次元の面の上に表現したものである」(堀 淳一『地図 遊びからの発想』)

自らの手で地図をつくるには、適切に省略し、デフォルメする感性が必要だ。

出来合いの「地図」を見て、歩くだけでは、「地図をつくる力」は高まらない。知らない土地を、地図なしで歩く。時には行き止まりにぶつかり、時にはとんでもないところに出てしまい、なかなか行きたいところにたどり着かない。こうして自分の足と勘を手がかりに、あちこち歩きまわると、地面に沿った虫の目と、上空から一気に展望する鳥の目とがともに育ってゆく。

こうして育つ「地図をつくる力」を佐伯胖先生は「略図力」と定義している。Feel°C Walk して高まった感性によってピックアップした情報を、Fantasy Workによって操作・変形し、現実世界を写しとったモデルとして表現する。それが佐伯先生の考える「略図」だ。

「略図はモデルや現実を探求していく際の入口のようなものである。それは、認識者の個人的な主観や『……のつもり』とでもいうようなものの反映で、必ずしも『万人向けに』記録を残そうという動機はなく、自分が『あっ、ここが大切だな』と思った瞬間を、自分自身の中に取り込んでおこうという、自分自身に向けた『覚え書き』である。」(佐伯胖『ジョンピュータと教育』〜地図の記号論からのマゴビキ〜)

虫の目と鳥の目とを両方駆使して歩き回ってFeel°C Walkすると、きわめて個人的で恣意的ではあるものの、「現実」を簡略化し、図式化してとらえられるようになる。これを書き残し「地図」をつくる作業。さらには、できあがった極めて個性的な「地図」(国土地理院のつくる汎用型地図とは対照的な)をいじくりまわしてあれこれ発想すること。こうして「地図」から新たな「知」が生まれて、「知」図になる。

「時間地図」をつくりだした杉浦康平(工作舎で松岡正剛とともに一時代をつくったデザイナー)は、デジタルに徹した手法で得たインフォグラフィックを素材に、マンピュータ的な手仕事で作図しているときに、デジタル作業から漏れ出したアナログな「直感」をつかんだと言う。指先のゆっくりした探索作業から妄想が生まれ、ひらめいたのだ。

「インフォグラフィックスの間に滲みだす『情』というものを感じとると、A点からB点まで特急列車が走り時間短縮されたと言うけれど、二地点の間に住んでいる人たちはどうなるか……ということが、作図の間に、疑問点としてはっきり見えてくる。中間に住む人びとの場所に行くためには、普通列車に乗りバスに乗って、海岸にある家の場合には歩いて行く……というような、遅い時速の移動手段を到達しなければならない。時間がかかる方向へ……とはみ出していくんですね。」(杉浦康平ダイアグラム・コレクション『時間のヒダ、空間のシワ…[時間地図]の試み』)

デジタルによるダイアグラムを行うためにも、アナログに「地図化」する力がより一層必要となる。TQ Feel°C Walkの重要性は増すばかりである。

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